- 2021.04.21
- 器循環プロジェクト Reuse Pots Project
レストランで眠っている、愛着ある器をシェフが提供。必要としている人の手に再び送り出すプロジェクト。biniの中本敬介さんが発起人となり、inflorescenceの廣田さんが統括となりアイディアを膨らませました。そして2019年秋、清水焼の郷祭りの「トキノハ エシカルマルシェ」の中に特設ブースを設け「福袋」として来場者のみなさんに販売しました。
<きっかけ>
きっかけは、トキノハのうつわを日頃から使ってくれていたBiniの中本さんとの会話でした。
料理人が自分のお店を出す。最初はお金がない中で、厨房機材や内装、器にいたるまで全てを整えていく。営業が軌道に乗るにつれ、自分の料理の方向性に合ったうつわにシフトチェンジしていく。すると、創業当時にあらゆる料理を受けとめてくれた思い入れのあるうつわも、少しずつ使われる回数が減っていく。志のある若い人たちに、自分が大切にしてきたうつわをバトンとしてつなぎたいーー
そんな中本さんの想いに、うつわを作る立場として何ができるか考えたところから【器循環プロジェクト】は始まりました。
<プロジェクト概要>
inflorescenceの廣田さんからは、レストランから提供された器をトキノハが窓口となり、パッケージ化。それを一般のお客さん向けに提供。売り上げの一部を、レストランに新たな器の購入資金として提供するというサイクルが提案されました。「作り手が器を作り、買い手の手元にいく」という単なる一方通行の流れではなく、うつわをめぐって生まれる新しいサイクルでした。
プロジェクトを深めていくにあたり、料理人の方達と器の勉強会も開催しました。陶器と磁器はどう違うのか、メリット・デメリットは、金継ぎは・・・。作り手と使い手で器の知識を共有することにより、器を使うことへのさらなる造詣を深めていくためです。
その勉強会のなかで「器がレストランに眠っているか」の調査も行いました。すると、意見のあった20店舗のうちの4分の1から実際に器を提供したいという手が挙がりました。共通していたのは、シェフが抱く器への愛着。捨てるだけで終わりにしたくないというあたたかな温度感でした。
<”福袋”として販売>
そして2019年、清水焼の郷祭りで、トキノハが主体となっておこなったトキノハエシカルマルシェのなかに【器循環プロジェクト】ブースを設けました。清水焼の郷祭りは、たくさんの窯元が集まり新品の器を販売する場所。そんな中でリサイクルの器のマイナスイメージを払しょくするため、”福袋”という形をとることにしました。さらに、『Repair=直す/修復する/生き返らせる』『Reuse=再利用する』『Redesign=再設計する』という、プロジェクトに対する私たちの思いを丁寧に伝えながら一般来場者に販売。イベント終了までに、およそ30セット、7〜8割の器が必要とされる人の手に渡っていきました。
<むすびに>
作り手として私たちは器を作り、世に送りだすことを生業としています。しかし、器の原料である粘土は限りある資源。実際にもう採掘できなくなってしまった粘土や鉱物も多く存在します。このまま何もアクションを起こさずに作り続ければ、やきものの未来が先細るだけでなく、地球環境にも大きな影響を与えることになります。陶芸に携わる人間として、私たちに何ができるのだろうか。
「器を中心に人と人、そして、人と社会を繋いでいく」そして、「エシカルであること」「地球環境に優しくあること」。深まったコンセプトを柱に、勉強会や循環の場を継続していきたいと考えています。